肩の痛みといっても原因は様々です.
今回は,肩痛の中でも最も発症しやすい肩峰下インピンジメント症候群について書いていきたいと思います.
肩峰下インピンジメント症候群

肩峰下インピンジメント症候群とは,肩関節外転時(特に60°〜120°)に棘上筋腱,上腕二頭筋腱,上部関節包および肩峰下滑液包が上腕骨頭と烏口肩峰アーチとのあいだで圧迫され,炎症が生じることで発生します(肩峰下空間内構造物圧迫)
主な原因
・前かがみ姿勢(肩甲骨の異常な下方回旋・前方牽引位をとり,過剰な前傾・内旋した肩甲胸郭関節)
・小胸筋の短縮(肩甲骨の内転・下制)
・靭帯性不安定性,癒着性関節包炎,後部関節包の過剰な短縮,肩甲上腕関節周辺の筋短縮
・肩峰下空間容量の構造的変化
・腋窩陥凹の過剰な硬さ
・肩甲上腕関節または肩甲胸郭関節における運動異常
・肩甲上腕関節または肩甲胸郭関節の運動に関係する筋の疲労,弱化,制御不全あるいは短縮
・肩峰下空間内および周辺組織の炎症や膨張
・腱板筋腱の過剰な摩耗及びその結果生じる変性
・肩甲上腕関節の不安定性
・下部肩甲上腕関節包内の癒着
・肩甲上腕関節後部関節包における過剰な短縮
・烏口肩峰アーチ下縁に向かっての上腕骨頭の前方移動
・肩鎖関節周辺の骨棘形成
・肩峰あるいは烏口肩峰アーチの形態異常
改善方法
◯肩甲骨の後傾,外旋及び上腕骨外旋による上腕骨大結節の肩峰の後方移動を促すエクササイズ
◯胸椎,腰椎の伸展位及び骨盤の前傾位(肩甲骨の下方回旋・後傾・外旋)
◯ハムストリングス,大臀筋の柔軟性及び筋力向上
◯肩甲下筋,棘下筋,小円筋の筋力向上
◯僧帽筋下部線維,前鋸筋の筋力向上



肩甲胸郭関節の上方回旋の機能的重要性
・外転あるいは屈曲の180°の約1/3を占めている
・肩甲骨の上方回旋は胸鎖関節と肩鎖関節での運動と機能的にリンクしている
・肩甲面(前額面から35°前方の運動面)における肩甲骨の上方回旋は少なくとも以下の3つの重要な機能を果している
1. 上方回旋した肩甲骨は関節窩を上方かつ前外側に向け,上肢の前方および外方リーチを最大限にする構造的基礎を提供する
2. 上方回旋した肩甲骨により,三角筋中部繊維や棘上筋のような肩甲上腕関節外転筋群に最適な長さ・緊張関係を提供する
3. 上方回旋した肩甲骨は,肩峰と上腕骨頭との間の空間である肩峰下空間内における空席保持を助ける


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