左変形性膝関節症を推論してみたVer2

バイタルサイン

最高血圧 最低血圧 心拍数
155 110 82

※運動施行後(1週間の平均値算出)

視診・触診

視診:左右ともに腫脹は見られない.

全体的な下肢の長さとしては右下肢に比べ左下肢の方が短い※左OAによる膝関節屈曲拘縮を呈するため

触診:左右ともに熱感なし.

痛みの評価

立位姿勢時に左膝関節の内側関節裂隙にズキズキとした痛みが見られた.(NRS4)

この理由は,左OAによる(K-L分類グレードII)膝関節屈曲拘縮,内反変形及び,骨棘形成を呈する事から,膝関節の不安定性に起因した滑膜炎による疼痛,半月板周辺組織の疼痛,膝蓋下脂肪体由来の疼痛,膝関節周辺軟部組織に由来する疼痛などが上げられる1).

しかし,滑膜炎に対しては,ヒアルロン酸注射を主体とした対応により,炎症所見は一定期間で沈静化している為,関節機能の改善を目的とした運動療法により,疼痛の原因となる可能性は低いと考える.

次に,立ち上がり動作時に左関節の内側関節裂隙にズキズキとした痛みが見られた.(NRS4)

この理由は,膝OA患者における立ち上がり動作の傾向として,離殿前に体幹前傾を増大させ,頭部から胸部の重さを利用した立ち上がりを行うことで,膝伸展モーメントを小さくする戦略があげられる.

つまり,離殿時における外的内反モーメントによる内反ストレスが脛骨大腿関節関節内インピンジメント(外側スラスト現象)を引き起こし,その結果として,インピンジメント由来の疼痛が見られたと考える 2).

次に,階段を上る際に左下肢の膝関節内側に痛みが見られた.(NRS3~4)

この理由は,階段昇降時における患側片脚立位の際に,膝関節外的内反モーメントによる脛骨大腿関節の狭小化,滑膜炎による疼痛,半月板周辺組織の疼痛,膝蓋下脂肪体由来の疼痛,膝関節周辺軟部組織に由来する疼痛が生じたと考える.(外側スラスト現象)

次に,階段を降りる際に膝蓋骨下方に急激な痛みが見られた.(NRS5~6)

この理由は,膝蓋下脂肪体がADL上の繰り返しの機械的刺激によって微細な損傷を受け小出血を生じ,その刺激によって細胞浸潤・結合組織性肥大を起こし,線維化するために柔軟性を失い,膝関節伸展に伴う前方移動が阻害されることによって,脛骨大腿関節間や膝蓋大腿関節間に挟まれることで疼痛を引き起こす膝蓋下脂肪体炎によるものだと考える3).

又, 膝OAによる膝関節屈曲拘縮を呈する事から,階段降段時における患側大腿四頭筋の過緊張による膝蓋腱炎が原因で疼痛を生じていると考える.(床反力作用線から膝関節までのモーメントアーム増大による膝関節外的屈曲モーメントに対抗した膝関節伸展モーメントの増大)

次に,歩行時における膝関節屈曲の際に膝関節内側がズキっと急激に痛むのが見られた.(ゆっくり歩くと痛みは治る)※NRS3~4

この理由は,左OAによる内反変形を呈する事から,床反力作用線から膝関節までのモーメントアーム増大による膝関節外的内反モーメントが増大する.

その結果として,左下肢のMSt期に外側スラスト現象が発生し,関節下骨同士が擦れ合うことによる疼痛が生じたと考える.

又,歩行速度を落とすことにより疼痛は治まったとあるが,この理由は,歩行速度を落とす事で,Mst期の外側スラスト現象が抑制され,急激な内反角度の増大を抑制する為だと考える(モーメント=モーメントアーム×力)

圧痛の評価

圧痛部位 強度(NRS)
膝蓋骨
膝蓋腱近位部 3~4/10
内側関節裂隙 3~4/10
外側関節裂隙
大腿骨内側顆
大腿骨外側顆
鵞足部    +*1 3~4/10

上記の結果から,左下肢の膝蓋腱近位部に圧痛が見られた.(NRS3~4)

この理由は,膝OAによる膝関節屈曲拘縮を呈する事から,歩行時LR期における大腿四頭筋の過緊張による膝蓋腱炎が原因で圧痛を生じていると考える.(床反力作用線から膝関節までのモーメントアーム増大による膝関節外的屈曲モーメントに対抗した膝関節伸展モーメントの増大)

次に,左下肢の内側関節裂隙に圧痛が見られた.(NRS3~4)

この理由は,長田ら7)は「軽度内反変形と屈曲拘縮により荷重時に大腿骨内顆の後方が脛骨内側に形成 された潰瘍部に落ち込むため脛骨は外旋し,その時にかかる水平方向のストレスが繰り返されるためと考えられた」と報告しており,本症例患者における内反変形と膝関節屈曲拘縮を呈している事から,内側半月板損傷が原因による膝関節内側裂隙に圧痛を発症していると考える.

次に,左下肢の半腱様筋・半膜様筋遠位部の筋腱移行部,縫工筋に圧痛が見られた.(NRS3~4)

この理由は,膝OAによる相対的な下腿内旋位(絶対的には外旋する)を呈する事で,鵞足筋の停止部である事から歩行時ICにおける下腿が外旋し(膝関節屈曲拘縮によるヒールロッカー機能消失),筋腱移行部にSSCによる伸張ストレスが持続的に加わった事による鵞足炎が発症していると考えられる4).

又, Nur Hら8)は「OA患者における膝の内側及び,脛骨近位にわたる痛みを伴う圧痛はMCL滑液包炎によるもの」と報告しており,本症例患者における脛骨近位部に圧痛を訴えている事から,MCL滑液包炎の可能性も考える.

MMTの評価

股関節伸展の左右差に着目した.

Kannus Pら9)は「MCLの慢性的な外傷後の機能不全は損傷した膝に特徴的な内側の変形性膝関節症の変化を引き起こした」と報告されており,これは,歩行時LR期におけるKnee-Inに対する代償動作によるものであると考える.

つまり,LR期における大臀筋が機能不全を引き起こす事で,Eccによる股関節伸展,外転,外旋作用の弱化が生じ,Knee-Inのリスクが高まる.

したがって,本症例患者における股関節伸展が左右共に3という値は,左変形性膝関節症を呈していることから相対的に右の股関節伸展筋が弱化している事を意味しており,その代償動作として左側(患側)に過度な荷重を掛けていたのではないのかと考える.

その結果として,左脛骨大腿関節に対しての過度な左右同様や剪断が生じ, 内反変形,骨棘形成,MCLに対する過度な伸張ストレスによる内側半月板損傷といった変形性膝関節症の病態が見られたのではないかと考察する.

整形外科徒手検査の評価

内反ストレステスト  +P
外反ストレステスト
マックマレーテスト    +*1
アプレー牽引テスト
アプレー圧迫テスト
膝蓋骨跳動

上記の結果から,左下肢の内反ストレステストの検査時に痛みが見られた.

この理由は,内反ストレステストを加えることにより,左OA(K-L分類グレードII)による脛骨大腿関節の狭小化と骨棘形成を呈する事による内側型関節内インピンジメントによる疼痛であると考える.

次に,マックマレーテスト検査時に内方への捻転にてクリック音が見られた.

この理由は,内側型左膝OA(K-L分類グレードII)による,脛骨大腿関節内側関節裂隙の狭小化と膝関節屈曲拘縮を呈することによる内側半月板損傷の可能性が考える.(縦断裂,横断裂,変性断裂の分類に関してはMRIにて判断する)

長田ら7)は「内反変形を伴う内側型膝OAでは,初期には内側関節裂隙後方のストレスが増 大し,屈曲拘縮を伴うようになった進行期には半月板中節にまで拡がり,末期に近づくと前節にまで達するため」と報告しており,本症例患者においても,内側型膝OA,内反変形及び,屈曲拘縮を呈している事から内側半月板損傷による相関関係が強く見られると考える.

全体の考察

・Kannus Pら9)は「MCLの慢性的な外傷後の機能不全は損傷した膝に特徴的な内側の変形性膝関節症の変化を引き起こした」と報告されており,これは歩行時(LR期)におけるKnee-Inによる代償動作によるものであると考える.

 正常アライメントにおける脛骨大腿関節は生理的外反を呈しているが,LR期における大臀筋が機能不全を引き起こすとKnee-Inのリスクが高まる.(大臀筋のEccによる股関節伸展,外転,外旋作用の弱化)

 つまり,大臀筋の機能不全によるKnee-Inが起きた事でMCLが過度に伸ばされ,その結果,脛骨大腿関節の左右動揺が大きくなり,それを代償する形で関節内に摩擦が生じたと考える.

 まとめると,LR期における大臀筋の機能不全によるKnee-Inを代償する形として外側スラスト現象が生じた結果,大腿骨内側顆と脛骨内側顆間の摩擦及び剪断が起き,内反変形,骨棘形成,MCLの過度な伸張ストレスによる内側半月板損傷といった変形性膝関節症の病態が見られたのではないかと考察する.

参考文献

1)林典雄:運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈 下肢編,運動と医学の出版社,2018

2)https://www.jstage.jst.go.jp/article/ptcse/25/1/25_57/_pdf

3)https://ci.nii.ac.jp/naid/130005246070

4)https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/20/3/20_3_235/_pdf

5)https://www.jstage.jst.go.jp/article/thpt/27/0/27_0_100/_article/-char/ja/

6)日本整形外科学会:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/meniscal_tear.html

7)長田信人,腰野富久,斎藤知行「他」:内側型変形性膝関節症の立位X線Gradeと内側半月板変性のMRI像分類の関係,日関外誌,XVII,(2),139~144,1998

8)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29578473

9)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3416565

※実際の患者様情報ではありません

合わせて読みたい

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください