スポーツをやられたことがある人ならば,「乳酸」という言葉を一度は聞いたことがあると思います.
私もダッシュをしていて,疲れているのは乳酸が溜まっているからだと指導者に言われたことがあります.
そんな乳酸と疲労の関係性について書いていきたいと思います.
乳酸とは

乳酸とは,老廃物ではなく糖を分解する途中でできるエネルギー源です.
人は,生きていく為にエネルギーを絶えずミトコンドリアで産生しています(TCAサイクル)
その中で,不審者や火事から逃れるためにその場からダッシュをする等といった緊急事態に対応できるように,糖を分解して使いやすいエネルギー源にしているのが乳酸です.
例えば,いきなり不審者に襲われそうになったら,その場から逃れるためにダッシュをすると思います.そのときに,ダッシュ(不審者から襲われる=緊急事態)は疲れますので,その急激な疲れに対処する為に乳酸が糖から産生(解糖系)されるということです.
つまり,ダッシュをしている(疲労する)=糖を多く使っている=乳酸ができる
乳酸も最終的には酸化されて,ミトコンドリアでのエネルギーを産生します.
上記の見解から,乳酸は疲労物質ではなく,疲労を防ぐ働きをしているということが分かり,体内が無酸素だから乳酸が出来るわけではないということです.
以前までは,乳酸は酸素がない状態(無酸素運動)だからできるとされてきましたが,人間の運動において無酸素運動なんてのはあり得ないことで,どんな運動も有酸素運動になります.
つまり,必ず酸素が摂取されミトコンドリアでのエネルギー産生を行なっているということです.
疲労とは
乳酸が「疲労物質」ではないということが分かりました.
では,疲労の原因について書いていきたいと思います.
筋肉の中はカリウムが多くナトリウムが少なくなっており,筋肉の外はナトリウムが多くカリウムが少ない環境になっています.
筋肉が使われる時(ダッシュなど)はカリウムが筋肉の外に,ナトリウムが筋肉の内に入り込みます(脱分極)
本来ならば,カリウムは筋肉の中にいるべきはずが外に漏れ出してしまうのです.このことから,カリウムとナトリウムの筋内外のバランスの不均衡=筋の電気的性質の低下=筋肉が上手く働いてくれないが疲労の一つの要因と言われています.
もう一つは,「カルシウム-リン酸説」
運動はATP(アデノシン三リン酸)=ATP→ADPというエネルギーを使って行っています.
つまり,運動を行うことでATPからADPに変換される時のリン酸が多く蓄積し,筋肉の収縮の邪魔をしているのが疲労の要因だと言われています.
※筋収縮は,筋小胞体のカルシウムイオンがアクチンフィラメントのトロポニンとくっつくことで行われる.その時に,体内のリン酸濃度が高いとカルシウムイオンがリン酸とくっつくため筋収縮の阻害因子になる.
そのほかに,運動時における筋内が酸性(pHが下がる)になる事で酵素の働きが悪くなる事や血中アンモニア濃度の上昇による脳内の酸素代謝率の減少や連続した運動によるアセチルコリンの放出量の減少が原因で疲労する可能性も示唆されています.
まとめ
・乳酸はエネルギー源であり,疲労を防ぐ働きをする
・疲労は筋内外の電解質の不均衡説とカルシウム-リン酸説が有力※実際には多くの要因が複合しているので,この二つだけでも説明はできない.
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